「祖父母が韓国を離れた」「親が他国の国籍を取った」「自分もかつて韓国籍だった」。こんな背景をお持ちなら、F-4は知っておきたいビザです。雇用主のスポンサーがなくても、ほぼ制限なく働けて、永住権への道もはっきりしています。ただ、細かい条件には、特に兵役まわりで、見落とすと大きな代償を払うものがあるんです。航空券を買う前に、このガイドに目を通しておきましょう。
F-4ビザとは何か、なぜあるのか
在外同胞ビザ(F-4、재외동포 체류자격)は、韓国にルーツを持つ外国籍の方が、韓国で暮らして働くための資格です。一般の就労ビザにはない自由があります。雇用主のスポンサーは不要で、仕事の制限もほぼなく、長期滞在を更新でき、F-5へのルートもあります。根拠は在外同胞の出入国と法的地位に関する法律(英語の参考テキスト)です。2023年6月からは、在外同胞庁(재외동포청)が各種サービスを担当しています。
F-4の「在外同胞」に当てはまるのは誰か
法律上の対象は、2つのグループです。のちに外国籍を取った元韓国籍の方と、その直系卑属(직계비속)全員です。2019年の施行令改正で旧来の三世代までという上限がなくなったため、何世代目の子孫でも対象になります。旧ソ連諸国のコリョ人も含まれます。韓国系の養子縁組者は、先祖とのつながりを書類で示せれば、対象になる場合があります。韓国系でない外国籍の配偶者は、F-4の対象外です。法務部の2026年2月の在外同胞マニュアルによると、配偶者と未成年の子はF-3(同伴)の扶養家族ビザ、親はF-1(방문동거)の対象になります。
これまで別枠で扱われてきた2つのグループは、押さえておきましょう。
- 韓国系中国人(조선족、朝鮮族)。 2026年2月12日までは、F-4を取るために追加の条件が必要でした。大学卒業以上の学歴、60歳以上、KIIP(사회통합프로그램)ステージ4以上、政府が認める専門資格、韓国の高校卒業証書のどれかです。この別枠の条件は廃止されました。在外同胞であることを証明できる韓国系中国人は、ほかの在外同胞と同じ条件でF-4の対象になります。
- 旧ソ連諸国のコリョ人(고려인)。 カザフスタン、ウズベキスタン、ロシアなど、旧ソ連の国々に暮らす韓国系の人々です。元韓国籍者の直系卑属にあたるため、2019年の施行令改正以降は、世代の上限なしで対象になります。
F-4とF-2・F-5・F-6はどう違うのか
韓国にルーツを持つ外国籍の方は、まずF-4を考えるのが基本です。ただ、F系のビザはいくつか重なっています。F-2(거주)は、韓国系ではない専門職の方が、ポイント制などの条件を満たして取る長期滞在ビザです。F-5(영주)は永住権で、F-4で2年過ごし、十分な収入があれば申請できます。F-6(결혼이민)は韓国人の配偶者向けで、韓国系かどうかは問いません。ルーツだけで要件を満たせるなら、スポンサーのいらないF-4を選びましょう。配偶者が韓国系でなく、F-4を直接取れない場合は、F-3の扶養家族として申請できます。詳しくはF-3扶養家族ビザのガイドをご覧ください。F-3は、F-4のように自由に働けるビザではありません。F-3の配偶者が韓国で仕事を始めるには、事前に入国管理局で在留資格外活動許可(체류자격외활동허가)が必要です。F-4保持者の配偶者の中には、以前の制度でF-1(방문동거)を持っている方もいます。その場合は、有給の仕事を始める前に、韓国国外の取引先向けの仕事も含めて、1345外国人総合案内センターに確認しましょう。
参考までに、整理しておきます。
- F-4:韓国系の方向け。スポンサー不要。単純労務以外はほぼ就労可能。滞在期間は通常3年で、更新できます。
- F-2:ポイント制などの区分による長期滞在。スポンサーが必要な場合もあります。
- F-5:永住権。10年ごとに更新。就労の制限なし。
- F-6:韓国人の配偶者向け。就労の範囲は広く、更新は毎年です。
海外からF-4を申請するには
申請は、住んでいる地域を管轄する韓国の領事館で始まります。領事館を自由に選んで移ることはできません。多くの領事館が求める、アポスティーユ付きの無犯罪証明書が、実際には一番時間がかかります。早めに動きましょう。書類がそろえば、審査は通常数週間かかりますが、領事館によって違います。急ぎで処理してもらう方法はありません。
よく求められる書類は次のとおりです(正確なリストは領事館によって違うので、必ず管轄の領事館で確認してください)。
- 韓国系であることの証明:戸籍または現在の家族関係証明書(가족관계증명서)、現在の国での帰化証明書、韓国系の先祖につながる出生証明書。
- 母国で取得した、アポスティーユ付きの無犯罪証明書。米国の場合は、FBIの身元調査書に国務省のアポスティーユを付けるのが一般的です。領事館は最近発行されたものを求めるので、有効期間は管轄の領事館で確認してください。
- 韓国語の証明書:TOPIK 1級(または世宗学堂1B)が必要です。ただし、60歳以上の方、韓国でのF-4滞在が通算3年以上ある方、元韓国籍の方は不要です。証明書がなくてもF-4が出る場合はありますが、滞在期間が短くなります。
- パスポート、写真、記入済みの申請書、手数料。
手数料は、2027年12月31日まで、元H-2の申請者と、2026年2月の改正で移行する韓国系中国人・コリョ人について免除されます。
韓国国内からF-4を申請するには
観光、留学、就労などのビザですでに韓国にいる場合は、最寄りの出入国管理事務所か、HiKoreaの電子申請で、F-4への在留資格変更(체류자격 변경)を申請できます。必要な書類は、ルーツを示す書類も含めて同じです。在留資格変更の申請は、今のビザが切れる前に出す必要があります。入国後(または変更が認められたあと)は、法律や安全、公的な制度についての研修である早期定着プログラムを受けます。そして90日以内に、在外同胞居所証(거소증)か通常の外国人登録証(외국인등록증)を登録します。
登録後に国内の住所が変わったときは、14日以内に届け出が必要です(在外同胞法第6条第2項)。届け出を怠ると、最大200万ウォン(約22万円)の罰金になることがあります。一般の外国人登録証の保持者に適用される、出入国管理法の15日ルールとは違うので注意してください。
F-4で認められる権利と、就労の制限
F-4なら、スポンサーなしでどの雇用主のもとでも働けて、起業もできます。国民健康保険(건강보험、NHIS)にも、ほかの長期滞在者と同じ条件で加入できます。再入国許可なしで韓国に再入国することもできます。主な制限は、単純労務(단순노무)の禁止です。法務部告示第2026-65号(재외동포(F-4) 자격의 취업활동 제한범위 고시)で定められ、根拠は出入国管理法(출입국관리법)第18条第1項、施行令第23条第3項、施行規則第27条の2です。禁止された仕事に就くとビザ違反になり、ビザの取り消しにつながることがあります。
これまで制限されてきた職種には、製造業のライン作業、建設現場の日雇い(一般)、清掃サービス、皿洗い、配達ドライバー、農漁業の作業、廃棄物の回収があります。2026年2月12日の改正で制限リストが見直され、これまで制限されていた肉体労働の職種のいくつかが、F-4でも働けるようになりました。ただし、ビルの清掃、宅配やフードデリバリー、廃棄物の回収、マンションの警備、駐車管理(주차관리원)などは、引き続き制限されています。正式なリストは法務部告示第2026-65号にあるので、肉体労働の仕事を受ける前に必ず確認しましょう。
取り締まりにはばらつきがあります。特に2026年の改正前は、実際に単純労務の仕事をしていたF-4保持者もいました。見つかった場合、本人と雇用主の双方に罰金が科されます。F-4の申請では、国内単純労務非従事誓約書に署名します。ある仕事が単純労務にあたるか迷ったら、受ける前に在外同胞庁か入国管理に詳しい弁護士に確認しましょう。国家安全保障や機密に関わる分野の公務員の仕事も、国家公務員法(국가공무원법 제26조의3)により、外国籍の方には認められていません。
F-4の男性に、韓国での兵役はあるのか
男性で、一度でも韓国籍を持ったことがあるなら、F-4でも兵役が関わってくる可能性があります。他国の国籍を取っても、韓国の兵役義務がなくなるわけではないんです。二重国籍の方は、18歳になる年の3月31日までに国籍を選んで届け出る必要があります。届け出ないと、兵役の問題を解決するまで韓国籍を離脱できません。2018年5月1日以降に、兵役を終えないまま韓国籍を離脱した韓国系の男性は、40歳になる年までF-4を取得できません。韓国への渡航や申請の前に、必ず兵務庁(병무청)か、入国管理に詳しい韓国の弁護士に、ご自身の状況を確認してください。
押さえておきたいルールは次のとおりです。
- 3月31日の国籍選択の期限。 1998年6月14日より後に生まれた二重国籍の男性は、18歳になる年の3月31日までに国籍の選択を届け出る必要があります。過ぎてしまうと、兵役の問題を解決するまで、韓国籍を離脱できません。
- 2018年5月のF-4の制限。 2018年5月1日以降に、兵役を終えないまま韓国籍を離脱した男性は、40歳になる年の12月31日までF-4を取得できません。2018年5月1日より前の離脱は対象外です。
- 国外旅行許可(국외여행허가)。 海外に住む韓国籍の男性は、兵務庁が出す許可で兵役を延期できる場合があります。条件は年齢、海外での永住資格、海外に住んだ期間によって変わるので、兵務庁に確認してください。移民を理由に許可を受けた場合、1年のうち通算6か月以上韓国に滞在したり、1年のうち60日以上韓国で有給の仕事をしたりすると、許可が取り消されます。
男性で、一度でも韓国籍を持ったことがあり、兵役を終えていない場合は、兵務庁と入国管理に詳しい弁護士の直接の助言を得ないまま、F-4を申請したり、長期で韓国に渡航したりしないでください。対応を誤ると、空港で身柄を拘束されたり、何十年も入国を禁止されたりするおそれがあります。
F-4からF-5永住権へ進むには
F-4で2年間継続して住めば、F-5-6の永住権を申請できます。年収が前年の韓国の1人当たりGNI以上であることが条件です(2025年4月から2026年3月のサイクルでは4,995万5,000ウォン。基準は韓国銀行が発表する前年のGNIをもとに、毎年4月に更新されます)。同居の家族と世帯収入を合算する場合でも、本人の収入でGNI基準の50%以上が必要です。F-5にはほかにも、投資家向けのF-5-5や大口貿易向けのF-5-7といったルートがあり、審査の中身が違います。ただし、これらは別の区分で、F-5-6の在外同胞向け収入審査とは関係ありません。
韓国語の要件は、韓国滞在が3年以上のF-4保持者と、元韓国籍の方は免除されます。実際には、在外同胞の申請は一般の外国人より早く進む傾向がありますが、公表されている処理期間は変わるので、HiKoreaで確認してください。F-5は永住資格で、10年ごとの更新が必要です。韓国の国籍が与えられるわけではありません。韓国籍を取り戻したいときは、法務部に国籍回復(국적회복)を別に申請します。
F-4で韓国に戻るときの税金
F-4を取っても、税の居住者としての扱いは変わりません。1暦年に韓国に183日以上住めば、ビザの種類に関係なく、韓国の税務上の居住者になります。2026年1月1日からは、2つの暦年にまたがる連続183日も対象です(改正後の所得税法施行令(소득세법 시행령)による)。韓国の税務上の居住者は、全世界の所得に累進税率の6%から45%で課税され、さらに10%の地方税が上乗せされます(PwC Koreaによる)。
押さえておきたい点は次のとおりです。
- 5年間の猶予。 過去10年のうち韓国での滞在が5年以下の外国人は、韓国源泉の所得(と、韓国の法人が支払った外国所得や、韓国に送金した外国所得)にだけ課税されます。全世界所得への課税が先に延びるので、F-4で戻ってきた方にとって大事な制度です。
- 年末調整(연말정산)。 F-4の会社員も、雇用主が1月から2月に行う通常の年末調整を受けます。
- 自営業の申告。 F-4のフリーランスや個人事業主は、5月31日までに国税庁へ総合所得税の申告をします。
- 米国特有の義務。 F-4で暮らす米国市民も、世界中の所得に米国の税金がかかります。海外口座の残高が年のうち1日でも1万米ドルを超えればFBARの提出が必要で、残高がもっと多ければFATCAのForm 8938の提出が必要になることもあります。外国稼得所得控除と外国税額控除で負担は軽くなりますが、申告そのものはなくなりません。
詳しい内容と年末調整の流れは、Seoulstartの外国人居住者向け韓国の税金ガイドで解説しています。
F-4の銀行と日常生活
韓国の銀行は、F-4保持者を外国人として扱います。法律上そうだからです。必要な書類はほかの外国人居住者と同じで、有効なパスポート、外国人登録証(외국인등록증)か在外同胞居所証(거소증)、そして最初の口座は窓口への来店が必要です。最初の口座をアプリだけで開くことは、基本的にできません。海外の信用履歴は引き継がれないので、韓国での信用スコアは実質ゼロから始まります。
実際には次のようなことが起こります。
- 韓国のクレジットカードの審査が通るまで、口座を実際に使い続けて6〜12か月かかることが多いでしょう。海外の信用スコアは引き継がれません。
- ハナ銀行には、外国人専用のセンター(韓国語、英語、中国語、日本語、ベトナム語に対応)があります。新韓、ウリ、KB国民銀行も、外国人向けの体制が整っています。
- SKT、KT、LG U+の携帯電話の契約は、外国人登録証があればスムーズです。
- 不動産の購入は、基本的にほかの外国籍の方と同じルールで、区役所での登記とMOLITへの届け出が必要です。
- 必要書類のチェックリストや支店の選び方は、Seoulstartの韓国の銀行口座開設ガイドをご覧ください。
2024年から2026年の変更点
在外同胞庁が2023年6月に発足してから、F-4の制度は大きく変わりました。一番大きいのは、2026年2月12日のH-2統合です。韓国系中国人とコリョ人を、ほかのF-4から分けていた別枠のルールがなくなりました。2023年の在外同胞基本法(재외동포기본법)で、庁と第1次在外同胞政策基本計画(2024〜2028年)が定められました。
最近の変更を簡単にまとめます。
- 在外同胞庁が2023年6月5日に発足。 本部は松島(ソンド)国際都市で、ソウルの光化門(クァンファムン)にサービスセンターがあります。それまで外交部、法務部、兵務庁に分かれていたサービスを一本化しました。
- H-2ビザが2026年2月12日に廃止され、F-4に統合。 韓国系中国人とコリョ人は、追加の条件なしでF-4の対象になります。制限職種のリストが見直され、これまで制限されていた肉体労働の職種のいくつかが、F-4でも働けるようになりました。新たに対象になった申請者の手数料は、2027年12月31日まで免除されます。
- 子孫の世代に上限なし。 2019年の施行令改正で、F-4の対象が三世代までの子孫から、元韓国籍者の直系卑属(직계비속)全員に広がりました。旧ソ連諸国のコリョ人も含まれます。
- 早期定着プログラム。 2026年2月から、新規のF-4申請者(これまでF-4を持っていなかった方)は、早期定着の研修を受ける必要があります。
F-4でよくある落とし穴
F-4のトラブルの多くは、申請前に1時間ほど専門家に相談すれば防げます。特に大きいのは、兵役、2018年5月の制限、単純労務の取り締まり、米国の税金のわなです。次のどれかに当てはまる場合は、入国管理に詳しい弁護士に相談しましょう。
- 解消されていない二重国籍。 韓国系アメリカ人の中には、親が出生届を出したまま国籍を離脱しておらず、今も法的には韓国籍の方がいます。思わぬ兵役義務が生じることがあります。渡航の前に、最寄りの韓国領事館か在外同胞庁で確認しましょう。
- 米国の二重課税。 米韓租税条約、外国稼得所得控除、外国税額控除をきちんと使わないと、二重課税は現実に起こります。両方の国の申告に詳しい会計士に相談しましょう。
- FBARの未提出。 海外口座の残高が年のうち1日でも1万米ドルを超えると、提出の義務が生じます。故意でない不提出でも、罰則は口座1つにつき年1万米ドルを超えることがあります。
- 韓国の信用履歴がゼロ。 最初の1〜2年は、クレジットカード、個人ローン、住宅ローンで苦労すると考えておきましょう。
- 「韓国人」扱いされると思い込むこと。 法律上は外国籍です。銀行も保険会社も雇用主も、そのように扱います。在外同胞(재외동포)という呼び名が示すのはルーツであって、国籍ではありません。
出典
- Overseas Koreans Agency, Domestic Korean Settlement Support Guide (PDF)、定着支援サービスと政策(閲覧日 2026-06-04)
- Act on Immigration and Legal Status of Overseas Koreans (재외동포의 출입국과 법적 지위에 관한 법률)、law.go.kr の法令本文(閲覧日 2026-06-04)
- MOJ Notice 법무부고시 제2026-65호、F-4の就労制限の範囲(閲覧日 2026-06-04)
- Ministry of Justice, F-4 generational-scope expansion notice、2019年の直系卑属への拡大(閲覧日 2026-06-04)
- MOFA, overseas Korean F-4 eligibility and language criteria、語学要件の免除と水準(閲覧日 2026-06-04)
- Ministry of Justice, Easy Guide to Overseas Korean Procedures (알기쉬운 외국국적동포 업무 매뉴얼), February 2026 (PDF)、F-4保持者の家族ビザ(閲覧日 2026-10-20)
- Military Manpower Administration, overseas travel permit cancellation、兵役ルールと国外旅行許可(閲覧日 2026-06-04)
- PwC Korea Tax Summaries、居住者、全世界所得、5年間の猶予(閲覧日 2026-06-04)
- Income Tax Act Enforcement Decree (소득세법 시행령)、連続183日の居住者ルール(閲覧日 2026-06-04)
ビザや入国管理についての質問は、1345番に電話してください(英語、中国語、ベトナム語、ロシア語を含む多言語に対応しています)。
